いい湯だな 近畿の温泉めぐり
フロンティアエイジ12月号 第2面より
いい湯だな 近畿の温泉めぐり
入之波温泉山鳩湯(奈良県川上村)
紅葉映すダム湖眼下に 音立てて落下掛け流しの湯
紀の川を和歌山県から奈良県へさかのぼると名が吉野川に変わる。その源流域は吉野郡川上村。役場などがある村の中心部から17キロ上った大台ケ原北西麓の大迫ダム湖畔に入之波(しおのは)温泉山鳩湯がある。紅葉と濃い緑の曼荼羅模様を映す青い湖面のほとりからほのかに上る湯けむり。まさしく秘境の湯の風情だ。
山鳩湯は湖岸道路から湖面にかけて幅40メートルほどの斜面に、4層の建物を階段状に重ねたつくり。湖面から30メートル付近に39度のお湯が毎分500リットル自噴しており、そのまま10センチ口径のパイプで最下層の大浴場へ。天井部のパイプから音をたてて落ち、おへそまである深い大浴槽を満たした湯は、切り出し溝からとうとうと流れ出て露天風呂へ。
泉質を傷めることなく下へ下へと流す正真正銘の源泉掛け流し。最上段から50段の階段を下りて入浴する際に見かける「名湯」の名にふさわしいこの光景にまず目を奪われてしまう。
泉質がまた、全国でも珍しいナトリウム―炭酸水素塩・塩化物泉。口に含むと、炭酸ソーダに似た味がする。カルシウム、鉄イオンが多いため、湯はすぐに酸化して淡黄褐色となり、浴槽の縁は湯の花が厚さ20センチほどにもこびり付き、流紋まで描かれて天然のアートを現出している。
入之波地区は江戸中期・享保年間の古地図にも「温泉湧出ス」とあるなど、谷川の自噴泉を共同で使ってきた歴史がある。1973(昭和48)年、奈良平野の上水源として大迫ダムが完成し、谷が水没する時、当時の中村英一区長が「歴史まで沈めたくない」と斜面を掘削、地下150メートルで掘り当てたのが今の温泉。息子の又一さん(71)一家が守ってきた。
浴用では外傷、神経痛などに、飲用では糖尿、肝臓病によいという根強いファンが、週末には大阪、名古屋からも車の相乗りやバイクなどで日帰り入浴(10~17時、700円)に訪れ、300人になることも。奥さんと息子さんが腕をふるうイノシシ・シカ・アメノウオ・山菜のなべ料理が評判。宿泊も可。TEL07465・4・0262。 (む)
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